2026年7月10日、経済産業省はクレジットカード決済代行会社である株式会社全東信(大阪市)の破産手続開始を受け、影響を受ける中小企業・小規模事業者への支援策を発表しました。
何が起こったか
破産申請
全東信は2026年7月6日に大阪地方裁判所へ破産を申請し、同日破産手続開始決定を受けました。負債総額は約1,259億円とされています。
全東信とは
2006年設立の決済代行会社で、飲食業を中心に幅広い業種の加盟店へクレジットカード決済代行サービスを提供してきました。加盟店数は一時20万店を超えており、加盟店・取引先の裾野が広い会社でした。
当事務所でも全東信の決済代行を利用されていたクライアント様が複数いらっしゃり、入金サイクルへの影響についてご相談をいただいています。ニュースの見出しだけでは実感が湧きにくい事案ですが、決済代行という商流の性質上、直接の契約がない事業者様にも間接的に影響が及ぶケースがある点は、実務を通じて感じているところです。
どんな影響があるか
想定される影響
最も直接的な影響は、決済代行を通じた売上金の入金遅延・未入金です。
全東信は加盟店に代わってクレジットカード決済を立て替え、一定のサイクルで加盟店へ入金する仕組みでした。破産手続が開始されると、加盟店への支払いが止まってしまい、加盟店側は「売上は上がっているのに手元に現金が入ってこない」という状態に陥ります。
日々の仕入代金や人件費の支払いを売上金の入金に合わせて回している事業者様ほど、資金繰りへの影響は大きくなりやすいです。
これに伴い、短期的な資金繰りの悪化が想定されます。未入金分がそのまま貸倒れとなった場合、その金額を他の資金でカバーする必要が生じ、当面の支払いに充てる現金が不足するおそれがあります。
直接全東信と契約していない事業者様でも、取引先が全東信を利用していた場合は間接的な波及を受ける可能性があります。取引先の資金繰りが悪化することで、支払いサイトの延長を求められたり、発注量が一時的に減少したりといった形で影響が及ぶことも考えられます。
どんな対策がとれるか
経済産業省・中小企業庁は以下の支援策を実施しています。直接的な影響を受ける事業者は以下のような対応策をとっていくことになります。
日本政策金融公庫「セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)」
直近3か月の売上高が前年(または前々年)同期比で5%以上減少していることが目安ですが、今回の事案の影響をうけ、支援対象を「全東信の破産手続開始により今後の影響が懸念される中小企業・小規模事業者」にまで拡大されました。
全国の日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫に特別相談窓口も設置されています。
セーフティネット保証1号
「セーフティネット保証1号」は、大型倒産によって連鎖倒産の恐れがある中小企業を対象に、一般保証とは別枠で、融資額の100%を保証する非常に手厚い制度です。
全東信への売掛金債権を有し資金繰りに支障が出ている事業者向けに、信用保証協会での事前相談が始まっています。
※利用には「指定事業者」への指定が必要ですが、7月31日(金曜日)に告示を行い、セーフティネット保証1号に指定されました。
既往債務の返済条件緩和等の対応
今回の影響を受けた中小企業・小規模事業者の実情に応じて、すでに行っている借入に関しても条件変更などを柔軟に対応するよう金融機関に対して経済産業省から要請がだされています。
そのため、すでに行っている借入に関しては金融機関へご相談することも可能です。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)加入者向け:無利子貸付
節税策などで経営セーフティ共済に加入されていた方は無利子貸し付けを受けられる可能性があります。
※回収できなくなった額と掛金総額の10倍〔上限8,000万円〕のいずれか少ない額
無担保・無保証人・無利子ですが、借入時には貸付額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅する点、倒産発生日から6か月以内に貸付請求が必要な点にはご注意ください。
取引先の倒産に対しての対策
取引先やその取引先の倒産に対してできる手段はそう多くないと思います。信用でビジネスを行っていく以上、どうしてもリスクは残りますが、
以下のような手段を使って少しでもリスクを抑えたり、実際に事が起こってしまったときの防衛策を用意しておくことができることかなと思います。
①決済・取引先の分散:一社への依存を避け、リスクを分散する
やはり得意先の比重が大きくなればなるほどリスクは高まります。またある得意先への売上比率が高まれば高まるほど、そこからの脱却は難しくなってしまいます。特定の得意先への売上比率が高い場合、そこへの売上を落とすというのは実際には難しいので、他の売上を増やすことに注力する必要があります。
②与信管理の定期的な見直し:取引先の財務状況・信用情報の定期確認
得意先が中小企業の場合、相手の財務状況を知るというのはあまり現実的ではないかもしれませんが、その場合には「取引金額に一定金額の上限を定める、それ以上のきんがくの場合には先に入金してもらう」というような制度設計をするなども1つの手段です。
③貸倒に対する保険や売掛金保証サービスの活用
取引先の倒産・未入金時に保険会社や保証会社が売掛金相当額を支払うサービスもあります。直接的に取引先の倒産に対して防衛するならこのような商品になるかと思います。
ただ、保険料がかなり高かったり、上限金額があったり、保証の設定に手間がかかったりする等商品によって一長一短あるようなので、複数のサービスの中から自社にあったものを比較検討する必要があります。
以前は損保ジャパンから事業活動総合保険(ビジネスマスター・プラス)の「商取引ユニット」という商品で非常に利便性の高い貸倒の補償をしてくれるサービスがありましたが、その利便性の高さから不正請求が多発していたようで現在は販売停止になっています。
適正に利用されていればすごく良い商品だったのですが、、、
当事務所ではそこまで大きくない金額の信用保証サービスとして「URIHO(ウリホ)」(株式会社ラクーンフィナンシャル)を推奨しています。URIHOというサービス自体が与信管理も行ってくれるので、そこまで人員や時間がさけないという会社にはいい選択肢かなと思います。
④経営セーフティ共済(倒産防止共済)の活用
ほとんど(繰延型)節税用の商品として活用されている経営セーフティ共済ですが、本来の目的は取引先倒産時に無担保・無保証人で共済金の貸付を受けられるという共済制度です。
あくまで貸し付けをうけられるだけなので、保険とは違いますが、当面の資金確保には役立ちます。取引先の倒産で売掛金が回収できなくなると自社まで連鎖倒産しかねませんので、これを防ぐ効果があります。
まとめ
今回の決済代行会社の破産は、直接の取引がなくても波及しうる点が特徴です。また、決済代行会社ですから、通常の破産・倒産以上におそらく取引先の数も膨大だったのではないでしょうか。
既に影響を受けた事業者様は、必要があれば上記の公的支援策の活用を進めてください。また今回は影響がなかった事業者様も、いつ自社の取引先に不足の自体があるかわかりません。このニュースをきっかけに自社でとりうる今後の対策を考えていきましょう。
参考資料
- 経済産業省「全東信の破産手続開始により影響を受ける中小企業・小規模事業者への支援を実施します」(2026年7月10日)
https://www.meti.go.jp/press/20260724005.html - 中小企業庁「株式会社全東信の破産手続開始を踏まえた金融上の対応について要請しました」
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2026/260710.html
