事業の帳簿、何をどれだけ保存すればいい?【個人事業主編】

「確定申告のために、領収書をとりあえず箱にためている」という個人事業主の方は少なくありません。ただ、帳簿や書類の保存には法律上のルールがあり、白色申告でも青色申告でも、記帳と保存が必要です。今回は、個人事業主が押さえておきたい帳簿書類の基本的なポイントを整理します。
帳簿とは何か
「帳簿をつけましょう」とよく言われますが、そもそも帳簿って何なのか、あまりちゃんと説明されないまま使われている言葉かもしれません。
一言でいうと、帳簿とは「日々のお金の動きを記録していく書類」のことです。1つの書類を指すのではなく、いくつかの書類の集まりにつけられた呼び名です。
中心になるのは次の2つです。
- 仕訳帳:取引をあった順番に記録していく、いわば「取引の日記」
- 総勘定元帳:仕訳帳の内容を、勘定科目(現金・売上など)ごとに整理し直したもの
この2つがあれば、決算書(貸借対照表・損益計算書)まで作れます。それ以外の現金出納帳や売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などは、必要に応じて追加していく「補助簿」というポジションです。
今は会計ソフトを使えば、日々の取引を入力すると、帳簿に自動で反映されます。入力が完成していれば決算書も自動で作成できるので、「帳簿を手作業で作る」という感覚はほとんどなくなっています。
帳簿とは、書類とは
「保存しておかないといけないもの」をまとめて、法律上は「帳簿書類」と呼びます。
「帳簿書類って何?」と聞かれると、実はこれ、2つのものをくっつけた言葉です。
- 帳簿:日々つけていくもの(仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳など)
- 書類:取引のたびに受け取ったり、決算のときに作ったりするもの(領収書・請求書・見積書・契約書・損益計算書・貸借対照表など)
イメージとしては、帳簿は「自分でコツコツ作っていくもの」、書類は「向こうから来る、または締めのタイミングで作るもの」です。
白色申告でも帳簿はつける?
「白色申告だから、帳簿はいらない」というのは誤解です。事業所得・不動産所得・山林所得のある方は、白色申告の方も含めて全員に記帳と帳簿書類の保存の義務があります(2014年1月〜)※1。ただし白色申告の記帳は簡易な方法でよく、日々の合計金額をまとめて記載する形でも認められています※1。
一方、青色申告の特別控除(55万円・65万円)を受けるには、複式簿記による記帳が必要です。簡易な記帳の場合は控除額が10万円になります※2。
ただし、2027年(令和9年)分の所得税からは、青色申告特別控除の要件が見直されます。特に簡易簿記は、前々年の事業所得・不動産所得の収入金額が1,000万円を超える場合、10万円の控除が受けられなくなります。複式簿記で記帳してe-Taxで申告すれば、65万円(優良な電子帳簿などの要件を満たせば最大75万円)の控除が受けられます※3。簡易帳簿のポジションが大きく変わるので、該当しそうな方は早めに準備しておくのがおすすめです。
保存期間はどれくらい?
結論から言うと、大雑把に管理したい方は、すべて7年間保存しておけば安心です。
法律上は、青色か白色か、また書類の種類によって5年と7年に分かれています※3。
| 書類の種類 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 帳簿 (仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳など) | 7年 | 収入・必要経費を記載した帳簿は7年 それ以外の帳簿は5年 |
| 決算関係書類 (損益計算書・貸借対照表・棚卸表など) | 7年 | 5年 |
| 領収書・預金通帳など | 7年(前々年分の所得が300万円以下の方は5年) | 5年 |
| 請求書・見積書・契約書・納品書など | 5年 | 5年 |
保存期間は、確定申告期限(原則3月15日)の翌日から数えます。なお、消費税の課税事業者が保存すべき請求書等や、適格請求書(インボイス)の写しなどは、上の区分にかかわらず7年間の保存が必要です※3。
一方で、書類ごとにきちんと管理できる方や、書類の量が多く保管の手間やコストが気になる方は、無理に7年で統一せず、上の表のとおりに運用しても問題ありません。ご自身の管理のしやすさと保管コストのバランスで決めていただければ大丈夫です。
保存方法は?
帳簿書類の保存は、今も昔も「紙」が原則です※5。ただし要件を満たせば、印刷せずデータのまま保存することも認められていて、今はその際の税務署への事前申請も不要です(令和4年1月〜)※5。
さらに注意したいのが、メールやネット通販でやり取りした請求書・領収書などのデータです。これは2024年1月から、紙に印刷するのではなくデータのまま保存することが原則義務化されています(※事情があり、税務調査時に紙で提示できる場合は紙保存も認められる猶予措置があります)※5。個人事業主も対象です。
領収書などの紙は、以前は「A4用紙に貼り付けて保管」といった方法もありましたが、現代ではそこまでする必要はないと思います。ただ、必要なときにすぐ確認できるよう、月ごと・取引先ごと・用途ごとなど、ある程度まとまった状態にしておくことはおすすめします(この保管方法については、別の記事で改めて詳しくお話しします)。
まとめ
個人事業主は、白色申告でも青色申告でも、記帳と帳簿書類の保存が必要です。保存期間は5年と7年に分かれますが、迷ったら「全部7年保存」にしておくのがシンプルです。ただし、書類が多くて保管コストが気になる方は、表のとおり5年と7年を使い分けても問題ありません。
保存方法は紙が原則ですが、要件を満たせばデータ保存も可能です。特にメールやネット通販でもらった請求書・領収書は、2024年1月からデータのまま保存することが義務になっているので、ここだけは要注意です。
参考文献・もっと知りたい方はこちら
※1 国税庁 No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2080.htm
※2 国税庁 No.2072「青色申告特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
※3 国税庁「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」(令和9年分以後の10万円控除要件の変更)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026004-012.pdf
※4 国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm
※5 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
・国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/index.htm
・国税庁 No.2070「青色申告制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
・国税庁パンフレット「はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存(電子帳簿等保存)」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_02.pdf
・J-Net21「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」https://j-net21.smrj.go.jp/solution/financial/accounts/tax/20140329_04.html
